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アニメが待ちきれないので『理系が恋に落ちたので証明してみた。』アフレコ現場に潜入してみた。

【序論】

このレポートは、TVアニメ「理系が恋に落ちたので証明してみた。」のアニメ化発表から放送開始まで本作がどのように作られていくのかをレポートするものである。本項ではその第二弾として本アニメのアフレコ現場に潜入し、必要な作業や手順、様子、進捗について論じていくこととする。


【本論】

アニメーション制作に欠かせない大事な作業の1つである「アフレコ」。アフレコというと、多くの人が「声優がマイクに向かって演技をしている状態」を思い浮かべる。しかしアフレコは、声優だけで成り立たない。その裏側には、録った音声を繋ぎ合わせるなどして最高のアニメを作るべく動いている人たちが存在する。この部分について語られることはまだまだ少なく、情報が足りていない。そこで、この裏側の部分にもスポットライトを当て、アフレコの全貌を明らかにする。

■伝えるべき情報
・アフレコに関係する仕事の種類や作業内容
・アフレコの流れ、段取り、かかる期間
・現場に流れる空気
・大変さ、やりがい

■伝える方法
当作品「理系が恋に落ちたので証明してみた。」のアフレコ現場に潜入し、その様子を取材するとともに、音響監督の今泉雄一氏、音響制作の森川潤子氏、主要キャラクターの声優を務める役者たち5名に話を聞き、その内容をレポートする。

■「理系が恋に落ちたので証明してみた。」におけるアフレコの場合
・音響制作(当作品の場合、森川氏)は、会社や人とお金を繋ぐ仕事

森川氏がアフレコで行なう仕事は、制作会社やスタッフ、役者のスケジュールを抑え、予算と照らし合わせて発注を行なうなど「管理」をする仕事である。
まず、あがってきたシナリオ、絵コンテから役者は誰が出るのかを拾い出し、台本を製本するため印刷会社に納品する。それと同時に、アニメ制作会社(当作品の場合、株式会社ゼロジー)に絵コンテを納品するよう手配する。これはアフレコ用の映像を制作するために使用される。その後映像と、映像と照らし合わせ修正された台本が送られてくるため、これを音響監督(当作品の場合、今泉氏)に渡す。また、役者のキャスティングにも関わり、スケジュールや予算の管理を行なう。このほかにも、アフレコ当日に電車の遅延や体調不良等で役者が足りていない場合、事務所のマネージャーに連絡して確認するなど、全体を確認しながら調整して回していく。
誰が何をどこまで担当するかのパート分けや、責任者を整理しながら手順を踏んでやっていく必要があるため、広い視野を持ってフレキシブルに対応していく必要がある。2次元の制作といえど現場を動かしているのは3次元の生きた人間であり、人間同士の相性もある。そこも考慮しつつ現場をセッティングし、楽しく雰囲気よくアフレコを終えられるよう組むことが、森川氏にとってのやりがいであり喜びだと述べていた。なお、当作品のアフレコ現場は、現場入りしたスタッフや役者が和気あいあいと談笑し、互いに最終チェックをし、本番が始まると一気に真剣さが漂うという理想的な現場であった。

・音響監督(今泉氏)が行なっているのは、音響に関わることの「調整」

今泉氏がアフレコにおいて行なう仕事は、監督や原作側と役者の認識や、映像と音声の違和感の払拭など、音響に関わるすべてを調整することである。
森川氏から受け取った台本を見て、誰がどこで喋っているかを確認し、パッと見て足りないところを補うなど収録の段取りを決める。例えば、キャラクターの幼少期の役者が台本に書かれていない場合でも、あった方がいいと思えば依頼して追加する。
また、役者が演じるにあたって、表情や細かい構成等この段階の映像と台本だけでは分からない部分が出てくる。そこでアフレコ前に今泉氏が監督にチェックする項目を洗い出し、詳細に確認して役者に伝え、役者の意見とすり合わせていく。その際、初登場のキャラクターがいればそのキャラクターの方向性、難しい言い回しや単語、イントネーションの確認も行なう。
アフレコ時の流れとしては、まず一度テストとして通しで声を録り、それを見て監督や今泉氏、同席している場合は原作者も交えてテンションや言い回しを修正していく。セリフがかぶっているところは、どちらかが聞こえなくなったり、タイミングをずらしたりできなくなるため、「別録り」をする。こういった打ち合わせをしたあと、再び必要な箇所をアフレコしていく。この調整をするのも仕事の1つ。これらの調整と伝達によって役者の潜在能力を引き出し、良い芝居がを生み出すことが、やりがいであり喜びだと今泉氏は述べる。

・役者もアフレコまでにたくさんの下準備をしている

アフレコに挑むにあたって、役者たちも見えないところで様々な準備を行なう。まずは台本を全て読んで全体を把握し、そのあと自身が演じるキャラクターについてさらに読み込む。そして映像や原作などと照らし合わせて演技の方向性がある程度固まったら、実際に演じて録音したものを聞きながら、当日のアフレコまでにキャラクターやテンションを調整していく。そのほかにも、それぞれ役者ごとに本番に向けて様々なことを行なっている。

本作「雪村心夜」役の内田雄馬氏は、台本から自分が演じる役や掛け合う相手の心情、演出意図、作品で表現したいことを読み解きつつ、様々な可能性を見落とさないよう広い視野を持つことを心掛けている。「氷室菖蒲」役の雨宮天氏は、映像を見ながら自身が演じるタイミングをチェックし、強調する部分やイントネーションも明確にして台本に書き込んでいく。また、「奏言葉」役の原奈津子氏は担当キャラクターを深く好きになれるよう、常にキャラクターの視点で気持ちを考えているという。そして「棘田恵那」役の大森日雅氏は自分のキャラクターが全体の中でどのような立ち位置なのかを把握し、より演技に深みを持たせられるようにしており、「犬飼虎輔」役の福島潤氏は、誰かにプレゼントを贈るような気持ちで、絵や台詞に負けないみんなが楽しくなるお芝居をするために、台本や原作だけでなく、類似する映像なども勉強して役作りをしている、と明かした。

どの役割でも見えている仕事はほんの一部分であり、実際は1つの作品を作り上げるためにその何倍も、何十倍もの時間をかけて準備をし、それを「アフレコ」という現場に集約できるよう努力し続けている。この努力があるからこそ、観ていて楽しい、キャラクターと演技がピタッとはまる魅力的なアニメが完成するのだ。

・声を録り終わった後も、今泉氏、森川氏の調整作業や制作進行は続いていく

アフレコ終了後は、ミキサー及びアシスタントでOKテイクを繋ぎ合わせ、台本の順番通りに並べ直す。それを森川氏が絵を担当している会社に渡し、タイミングが変わっている場所など変更点など「差し替え」をして調整していく。絵コンテから原画になり、カラーになっていく過程で、音声と合わせた時に最初の絵よりキャラクターのリアクションが大げさになる場合も、またその逆もある。これは、監督の意見で変わってくる。

映像に音楽や効果音をつける「ダビング」用の絵が送られてきたら、今泉氏が音楽をつけていく。今泉氏が行なうのは、繋ぎ合わせる編集作業。最後の仕上げはミキサーが行なう。例えば、室内で喋っていると反響するが、外では響きが変わってくるため、場面に合わせて調整していく。距離感もこの際に調整される。その後効果音の担当者が効果音を仕込み、そこからダビングして完成形に近づけていく。ここまでの作業が終わったら、完成したものを音響スタッフ全員で聞き、音楽や効果音、セリフのバランスを取りながら微調整し差し替えていく。時にはこの段階で映像が絵コンテ状態のこともあり、監督の意見を聞いて想像力を働かせながらの調整となる、と今泉氏は述べた。

制作期間は、絵コンテがきた段階からアフレコまで最短約2週間、アフレコからダビングもまた最短2週間ほどだが、後者は絵のクオリティが上がりそうな場合は待つことも多く、1ヶ月半程度、長ければ半年ほど空く作品もある。ここがうまくいかなければ、絵と音、セリフが合っていない作品が出来上がってしまうため、極力それを避けるためにこの期間が必要なのだと2人は話していた。


【結論】

・森川氏の仕事は、全体を把握し会社や人とお金を繋ぐ仕事である。
・今泉氏の仕事は、スタッフと役者の意思疎通、映像と音声の違和感の払拭など音響に関わるすべての調整である。
・当作品の現場は、和気あいあいと、かつ真剣に仕事に取り組む理想的なチームである。
・製作期間は、絵コンテからアフレコ、アフレコからダビングともに最短約2週間かかる。

提出日:2019年08月03日